こんにちは、ボウズです!
フランスのヴィンテージワークウェアの縫製やボタン付けに使用される糸のほとんどはリネン糸です。
古いものであればコットン糸も使われたりしますが、特に厚い生地の衣服になればデッドストックであっても言葉通り経年劣化だけでちぎれてしまうことが多々あります。
あとは生地が破れているところを繕う糸は基本的にコットンです。
それから、1950年代辺りからはナイロン糸も使用され始めます。服本体の色は日焼けしているのに縫製の糸だけ真っ黒なのは、ナイロンを含め化学繊維でできた糸を使用しているからです。
ナイロン素材も日焼けで色が抜けることがありますが、自然素材のものに比べれば強いです。
他の素材の糸のお話はここまでにして、フランスのヴィンテージリネン糸にはもちろんたくさんのメーカーがあります。有名なものではDMC、WALLAERT FRÈRES(WF)、AU CHINOISなどがあります。
むうちブロカントではその中でもAGACHE(アガシュ)というメーカーのものを中心に販売していますが、他のメーカーではなくアガシュのものを集める理由を今回は伝えることができればと思います。
アガシュは19世紀の前半に、リネン素材の売買を目的として創業したメーカーです。
1960年代にはBelle Jardinière(ベル・ジャルディニエール)やDior(ディオール)、Le Bon Marché(ル・ボン・マルシェ)を有していた会社Boussac Saint-Frères(ブサック・サン=フレール)に買収されます。
ブサック・サン=フレールは当時テキスタイル分野に重点を置いていたマンモス会社ですので、彼らが買い取ったことだけでアガシュのリネン糸のクオリティがフランス国内でも群を抜いていたことは明白です。
また、アガシュが拠点にしていたのがフランスのリールです。
フレンチヴィンテージファンにとって、リールはなかなかおなじみな地域ではないでしょうか。大きなメーカーではAu Molinel(オ・モリネル)があり、その他小さなワークウェア企業もたくさんあったのがリールです。特にリネンやコットン、リネン/コットンのメティス生地に強いメーカーがリールには集中していました。
(余談ですが、逆にモールスキンコットンやコーデュロイ系統はリヨンやモン・サン・ミシェルなどフランス北西部に集まります。寒そうだからでしょうか。)
現代の視点から見てみると、カプセルに入っているという特徴が一番素敵な点です。
フレンチに限ったことではないと思いますが、ヴィンテージやアンティーク物が綺麗に清潔に保管されていることは非常に稀です。
ディーラーであれば尚更で、整頓できない量を抱え、服を見るのも嫌になってきた人は少なくありません(もちろんウキウキでやっているディーラーの方もたくさんいます)。
そうすれば自然と埃、湿気、土、雨風、日差しなど様々な「天敵」から服を守ることが放棄されます。
蚤の市(marché aux puces)という表現も、そういったことが由来です。
綺麗好きのお婆さんでもなければそれが普通です。
(これも余談ですが、その汚れを落として皆様にお届けできるよう、少しでも汚い場合は手洗いしてから販売作業をしています。)
これは服に限らず、糸も同じです。
カプセルにも箱にも入っていない糸は、上に書いた布の天敵から守られていない可能性が非常に高いので、様々な可視的・不可視的な汚れ、色褪せ・黄ばみ・質の劣化など手の施せない経年変化をしてしまっていることがとても多いです。
その点、アガシュのリネン糸は箱に入った上にカプセルが被せられています。箱に入っていない場合でも、そのカプセルは経年変化を極端に少なくします。
そのような実用的な良さはもちろんですが、アガシュは当時広告にもかなり注力していたメーカーで、カレンダーなども製造していました。
そのため、カプセルや箱、カレンダーの見た目はとても魅力的で、現代のフランス国内でもレトロファンから絶大の人気を誇ります。
質・実用性・見た目、全てにおいてフレンチヴィンテージリネン糸の最高点にいるのがアガシュです。
お直しにもコレクションにも最適!
むうちブロカント
ボウズ
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